耳を澄ます (試作品2)
もっぷ

しあわせ って意味も知らずにそれでも
その響きに惹かれて 微かに瞬く
ひかりを 疑えなかったのだと思う
決意をして 決意通りに堪えて生きてきた
泣いて泣いて泣いて泣いて いまもまた
わたしはいったい誰なのだろう
ときどき失う
いつもではない
普段は かなしい それ だと捉えている
間違えましたとけれどもう帰ることは易くはなく
待つか自決かいずれにせよ さぞかし孤独で絶望的な

たぶん 信じていた そのかたちは
あたたかなこんがりトースト
こがね色の美味そうなのがとろりと いよいよ
口に運ぶばかりのしあわせ
かならず
かならず母さんのいる食卓であたり前にかじりつく
満たされながら たどり着いたと

そのしあわせにはたどり着けずにこの
寒さ ひもじさ
さびしさ みじめさ
まして 身の、自由の、危機SOS

傍らにはよごれたぬいぐるみ 不意に
かなしい それ のわたしは悟る
かなしさは 存在する限りに避けがたく
森羅万象はだからみな詩としてしか在りようもないのだ と
夜道に転がっている忘れ去られたちいさな釘一本にしても
歌っているから 道化師の唄を
すくなくともわたしにとってしあわせとはうたかたのポエジーだった
まぼろしの、かなしみのこんがりトースト、産声うたごえの その涯



自由詩 耳を澄ます (試作品2) Copyright もっぷ 2016-12-18 17:41:37
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