雪の無人駅
オイタル

雪の無人駅
雪を掃く係りのものが雪を掃く
何でもないコンクリートの踏み板の上を掃くものがある
待合室の歌謡ショーのポスターからさびしさのしたたり
掃き残した埃と雪の混じった少し硬いものをさらに掃き集め
どこかへ行くものどこからか来るもの
眠る自転車

 もうどこへも行くことなく雪を掃くもの
 線路のかげから現れるもの

屋根の上の白い幻
しかし
無音で

 その壁に刻まれる
 遠い銃撃の影絵
 激情の指紋

得体のしれない小さな紙屑を掃きあつめながら
惨劇のように降りてくる雪の粒のあわいに手を止めて

聞こえてきたはずの音に耳をそばだてた


自由詩 雪の無人駅 Copyright オイタル 2016-12-11 17:20:19
notebook Home 戻る