ハーブ園
AB(なかほど)

  

ラベンダー絨毯の中
東へ東へ向かうバス
点在するハーブ園
スィングするカラフルな文字
流れる
ラジオから
セージ、パ リ、マリ 、タイム、、、
と聞こえ
行くのですか
と問い掛ける
ええ、これから
でもスカボロー・フェアー
なんて
どこでやってるのか知らないんです
ラベンダーの紫が途切れ
原生林と海がぶつかる道へ
美しい入れ墨の若者
踊りながら
これから行くのですか
と問い掛ける
コロポックルを彫る老人
振り返り優しく
行くのですか
と問い掛けてくる
長い髪と昆布を垂れる海人
岩場に上がり
行くのですか
と問い掛ける
ええ、たぶん
でも
行き先も知らないし
正しい道なのかも
知らないんです
バスは岬の先端に辿り着き
すぐそこには
島影が見えていたり
ここを渡って行った人
ここを渡って帰ってきた人
ここを渡れないままの人
ここから見ているだけの人
ここへ帰ってこれない人
そして
行くのですか
と問い掛ける
ここから続く空
はるか空の下
鉄の塊に乗り
さらにはるかな地に降りたったGI
行ってしまうのですか
と問い掛ける
あなたも行ってしまうのですか
と問い掛ける
あなたも列に並んで
あなたの親も見た事のない
変わり果てた瞳で
こおろぎを見つめるほどの
情も映えてこない瞳で
足並みは
揃わされてしまったのでしょうか
土から生まれた唄のように
いつまで経っても
詠唱の意味が
解けることはないでしょう
そして
スカボロー・フェアーは
終わる事を知りません
せめて
ハーブをちぎり
魂を
在るべき場所へ


   


自由詩 ハーブ園 Copyright AB(なかほど) 2003-11-14 01:30:05
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