火葬場
043BLUE

友人の死の
秒読みが始まった

君は「生きたい」とぼくに言った

このような時に
かけてあげられる
有効な言葉は
まだ発明されていない

すべてを
否定するかのように

ぼくは今
七輪で
あじの干物を焼いている

感傷に浸らないのが
今のぼくにできる
唯一の思いやりであるかのように

網の上で
炙られる
鰺の気持ちは
どんなものだろう・・・

そんな感傷に浸るのは
ずっと容易なのに・・・

ぼくは
鰺を火葬しながら

空へ昇ってゆく
灰の行方を見つづけた

あぁ
今日はいい天気だ

近くの森が
ゆっくりと揺れた

ぼくが呑み込んだ
君や
君の小骨たちが

ぼくの中で
ゆっくり融けてゆくのを
感じながら

ぼくは
いたたまれなくなってしまった

森の中を駆け抜ける
ぼくの息が

だんだんと
ラマーズ法になってゆくのを
感じながら

もうどこにもいない
君を探し続けた

森を抜けると
青空が広がりやがった

ぼくは・・・

それを破り捨てた


未詩・独白 火葬場 Copyright 043BLUE 2005-03-03 20:12:17
notebook Home 戻る  過去 未来