世界で最も哀しいポーカーテーブル
竜野欠伸

すました顔のままで
トランプの手札をふいに見る
余裕をちらつかせた得意のブラフで
先にあるチップも巻き上げたばかり
次から次へ老境にあるチップ全てを賭けて
さらに威力を増したブラフが
上手く逝くとだけ
そう信じていただけじゃないのか

決して悪くもないナンバーと
けれども良くもないピクチャーを
隠していたトランプのカード
立ち向かうポーズを取って
暗夜の戦争を知らずにいた
老人が自分の命にすら
値段を付けたラストゲーム

本当は誰も付きはしないはずだった
いつか昔のポーカーテーブルで
つい最初に誰かがトランプのゲームに
乗ってみただけで
気まぐれの真実が始まった
その誰かは深くは知らないのだけど
もう遠い果て何処かの記憶にある

涼やかで孤独な
政治ゲームを始めていた
ポーカーテーブルでは
ディーラーがシニカルな確率で
カードを配り終わるたびに
変わり映えもしない結果があるだけだった
ごく潰しのポーカーゲームは
ようやく終わったはずで
最期のカードを待っていた

そう投票をした人間たちは
賭けに付き合っただけ
では済まなかった
ジョーカー気取りもできない
素人女のポーカーフェイスが狂わせた
ラストゲームでは
もはや老人の汚い口先だけに
相手の素人女が
こだわり始めていた段階で
もう勝負は終わっていたのだろう

周りの見物客は
少しだけ珍しそうに
ただそれを暇つぶしで
喜んでいただけかもしれない

ナンセンスな栄光にある
フィーバーのなかで
ネオンサインで輝くカジノにいる
顔がない客寄せピエロが
近くに横たわる
寂し気なサクセスストーリーには
アメリカの落日があるだけじゃないのか
世界で最も哀しい
ポーカーテーブルのうえでは
残念だけどもう歴史に
ジョーカーが現れる伝説ですら
生まれはしない時代が
始まるとしたらとても悲しい 


自由詩 世界で最も哀しいポーカーテーブル Copyright 竜野欠伸 2016-11-10 07:45:12
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Democratic Poems