odor
5or6

亜熱帯のジャングルの地下は氷柱の連なった秘密基地でフラミンゴのピンクの色を解読している科学者がいる
その人はしとやかな女性で
趣味はお相撲を見ること
助手の一人がタランチュラを発見し大騒ぎとなったが
彼女は動じず足を持って外に放り投げて
水槽のクッピーに餌を上げていた
指先から落ちる銀粉を見ながら
僕は彼女の体から薫る不思議な香水の名前を聞こうか聞かまいか悩んでいた
そして水槽から離れ
机に向かうピンヒールの足を見ながらついに僕は聞いた

「きみの付けてる香水の名は何?」

彼女はピタリと止まってゆっくりと答えた

「Braveryよ」

そして背筋を伸ばしたまま歩いていった
彼女のB5のノートには
こっそり毛沢東の落書きがしてある

これが僕しか知らない彼女の秘密だ


自由詩 odor Copyright 5or6 2016-10-21 19:00:20
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