風
薫子
私は風が好きだ
向かい風の激しい風に向かって歩くとき
髪も乱れ、目も開けられないけれども
その風に向かって歩くのが好きだ
私は風が好きだ
潮風に髪をなびかせながら湿った潮の香のする
風を感じながら砂浜を歩くのが好きだ
私は風が好きだ
オフィス街の道のアスファルトから立ち上る
熱気を含んだ夏の風にスーツとブラウスを少し
汗ばませながら感じる風も好きだ
私は風が好きだ
冷たい北風に頬が切られそうな中
息を凍らせながら歩くのが好きだ
でも、一番好きなのは
初冬の街で枯葉を舞わせる風
その風の中を
あなたの腕に腕を絡ませて歩くとき
私は風は私の一部であり
私は風であると思うのだ
貴方を優しく包む風であると‥
でも、時々悲しくなる
私は風だから
貴方にいつになっても気づいてもらえず
抱きしめてもらうことが出来ないから‥
あなたが
私の中を
通り過ぎるのを
黙って見送るしかないから‥
自由詩
風
Copyright
薫子
2016-10-19 12:26:18