真昼間に航海を
ふく

船がゆっくりと流れていきました

振り返ると瀬は遥か遠くなり、手の平に乗るほどでした
瀬には重いものを全てを置いてきました
軽い思い出なんかは頭に入っていたので、置いてくることはしませんでした

音も無く青の上 地球が波打っています
誰かがゆっくりと弾いたピアノの広がりが沢山の波を作り
生まれて間もない泡は静かに音の中に揺れ消えるのでした

寝転がり空 ガスの雲が時間を気にせず回っています
ゆっくりと地球を包んでは消え、包んでは消えるのです
優しい包装紙は、いつまでたっても地球を包めないままです

蒼海を小船で航海です
何も積まないまま、私だけを積んで出港した船は
瀬からはもう見えなくなり、手の平にも見つけることが出来ないほどに遠く
地球が作る音の中に流れて行くのでした

生を隣り合わせに海へ、浮かび場所を探しに海へ、一人だけ照らす空へ

船はゆっくりと流れていきました


自由詩 真昼間に航海を Copyright ふく 2005-03-02 10:41:56
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