証城寺の性悪少女
ただのみきや

   
わたしの正気は陰鬱だが
わたしの狂気は陽気な歌
木魚バンドネオン炭酸水
      (証城寺住職 囃子ダダイ)



証城寺の性悪少女

ひどくあくどいのだ
そのだんまりにうんざりし
しばし不忍池を行き巡る目頭押さえ
「緋色の鯉 お口パクパクしてる――
おさないいざないの空恐ろしさに
カメが
眼鏡橋の下でカメが
きまりのわるいことにまぐわうのだがしかし
たしかに似通った夢をみたのはしかたがない
おえつおさえつ鎮め静かに
はらづもりつつみかくさず
はらり ほのめかす頬
「せんせい扇子が お膝の上で――
ひらりひらいてひいろのこい
鯉鯉恋恋鯉よ来い濃い恋乞う恋今宵来い子犬のように来いよ恋
かかって来やがれ!
はやしでねいりひやしてばかして
じっと目を閉じ
ギュッとたぬきして



           《証城寺の性悪少女:2016年10月8日》








自由詩 証城寺の性悪少女 Copyright ただのみきや 2016-10-08 21:40:06
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