廻る輪っか
白島真

「わたくし」がいつもうるさい主語だから野花は咲いて名もなく揺れる

気をつけろ死の面さらす詩行から蒼い樹液がぽたぽた垂れて

紫陽花の枯れた姿は傷ましいさっさと首を落として欲しい

かくれんぼの鬼のままみんな路地裏に消えてしまった 夕闇を抱く

缶蹴りの夕闇ふかく呼ぶ声の母の声だけ何故か永遠

この歳でまだ切ないと思う日は病んだ夕陽を滅茶苦茶浴びる

冥界に還りたいとは思わない今あるここが冥界らしく

生誕の時は未来にありましてぐるぐる廻る輪っかが痛い

日めくりの暦がたまるこの部屋で動く地球に揺れて遊べよ

思い出の死角に駅員立ちすくみ丸いパンチ切符の文字散らす

出発の時を告げない電車に乗ってあの日この日のちちははに会う

ひさかたのひかり喉から手を伸ばし明るい夏を咳こんでいる




短歌 廻る輪っか Copyright 白島真 2016-10-07 18:07:15
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