のぎへん
AB(なかほど)


先週末のやまびこの車窓
もうほとんど終わってしまったんじゃないかと思っていた
金色の風景が流れていた

一関のねじりはさがけはモリゾーみたいなのに
山を越えた千厩ではよく知ってる横一線
そのはさがけがまだ少なく
トンボとちょうがまだ盛んに飛んでいる


のぎへんのフラグメンツ


帯解寺の帰り道
奈良の盆地の五月晴れ
水田 若穂に 渡る風
あぜ道 道草 帰り道
生まれくるもの帰り道
生まれゆくもの帰り道


七尾湾に大キリコが投げ入れられ
歓声が沸きおこり
海上花火が鏡のような内浦に映える
と あいちゃんは
漁港へと走り出す
地べたに残された線香花火があと3本


彼女は意を決して走り出すのだが
決まっていつも
こおろぎが鳴き出し
それから
道のまん中に崩れてしまう


とんぼかげろうひがんばな
と何回唱えても
僕の鼓動は少しずつ速くなって
よくあることさ
とつぶやくと
君は翼で空をひとつたたいて
すいと方角を変えて行く


卵を産もうとするシャケは身が白くなる。まずまず白くなっても味は変わらないと思うのだが、それでも紅いほうが美味しそうに見えると、おじさんは卵を取り去った腹に紅麹をなぶりつけて、物干竿に吊るす。


すまぬ
全ては同じ命とはいえ今日も耕す
ただ己の愛するもののために
耕す
そんな奴にさえも木漏れ日はやさしい
影は
もっとやさしい


八つまわって生まれ年には
かざぐるまで遊びます
ずっとずっと昔から
そういうことになっております


あいにく
今日の大和の風は砂をはらんでいることもなく
腰かけた店先では下をうつむくしかなく
わかったよ
本当はもうとっくに思い出してるよ
差し出された干し柿は
とても甘く


雨が降っている
破れた蝙蝠傘をさした賢治さんがしゃがみこんでいる
100年経っても芽はまだ出ないらしい
僕らはときどき
種は蒔かれなかったんじゃないかと思う

10
みちたりの実をつけた木の下は
誘いの色と君の匂いに満ちていて
とても佇んでなんかいられずに
ものかけの実をひとつ齧って
足早に家へ帰る





トンボが秋津と呼ばれたり
銅鐸にかかれたり
そもそも秋津国と呼ばれてたなんて話を
誰に聞かせるわけもなく口にする
あぁ、これでは祖父と同じじゃないか

室根山のふもとも
まだ黄金じゅうたんがひろがる
先の台風のせいで田んぼの水が抜けずに
コンバインを入れられない
とのんびり答えてる

まだまだ
僕らものぎへんのくにのひとじゃないか





即興ゴルコンダより


自由詩 のぎへん Copyright AB(なかほど) 2016-10-02 15:58:40
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