先週末のやまびこの車窓
もうほとんど終わってしまったんじゃないかと思っていた
金色の風景が流れていた
一関のねじりはさがけはモリゾーみたいなのに
山を越えた千厩ではよく知ってる横一線
そのはさがけがまだ少なく
トンボとちょうがまだ盛んに飛んでいる
のぎへんのフラグメンツ
1
帯解寺の帰り道
奈良の盆地の五月晴れ
水田 若穂に 渡る風
あぜ道 道草 帰り道
生まれくるもの帰り道
生まれゆくもの帰り道
2
七尾湾に大キリコが投げ入れられ
歓声が沸きおこり
海上花火が鏡のような内浦に映える
と あいちゃんは
漁港へと走り出す
地べたに残された線香花火があと3本
3
彼女は意を決して走り出すのだが
決まっていつも
こおろぎが鳴き出し
それから
道のまん中に崩れてしまう
4
とんぼかげろうひがんばな
と何回唱えても
僕の鼓動は少しずつ速くなって
よくあることさ
とつぶやくと
君は翼で空をひとつたたいて
すいと方角を変えて行く
5
卵を産もうとするシャケは身が白くなる。まずまず白くなっても味は変わらないと思うのだが、それでも紅いほうが美味しそうに見えると、おじさんは卵を取り去った腹に紅麹をなぶりつけて、物干竿に吊るす。
6
すまぬ
全ては同じ命とはいえ今日も耕す
ただ己の愛するもののために
耕す
そんな奴にさえも木漏れ日はやさしい
影は
もっとやさしい
7
八つまわって生まれ年には
かざぐるまで遊びます
ずっとずっと昔から
そういうことになっております
8
あいにく
今日の大和の風は砂をはらんでいることもなく
腰かけた店先では下をうつむくしかなく
わかったよ
本当はもうとっくに思い出してるよ
差し出された干し柿は
とても甘く
9
雨が降っている
破れた蝙蝠傘をさした賢治さんがしゃがみこんでいる
100年経っても芽はまだ出ないらしい
僕らはときどき
種は蒔かれなかったんじゃないかと思う
10
みちたりの実をつけた木の下は
誘いの色と君の匂いに満ちていて
とても佇んでなんかいられずに
ものかけの実をひとつ齧って
足早に家へ帰る
トンボが秋津と呼ばれたり
銅鐸にかかれたり
そもそも秋津国と呼ばれてたなんて話を
誰に聞かせるわけもなく口にする
あぁ、これでは祖父と同じじゃないか
室根山のふもとも
まだ黄金じゅうたんがひろがる
先の台風のせいで田んぼの水が抜けずに
コンバインを入れられない
とのんびり答えてる
まだまだ
僕らものぎへんのくにのひとじゃないか
即興ゴルコンダより