まだまだだ
坂本瞳子

たるんでいる
それだけだろうか

絶対に遅刻してはいけない場面で
どうしてそんなことをするんだ
しかもそれが当の自分だ

この自分自身を許せないという
やるせない想い
この気持をどうやって処理したらいいんだ

熱さは喉元を過ぎると忘れる
時間が過ぎれば
また自分を許してしまうのだろうか

取り戻せない時間
やり直せない過去
言わなければ良かった一言

想い出と呼ぶと
聞こえは良く
美しく響く

なにもかもをかなぐり捨てて
ゼロからやり直したい

そんな都合のいいことは
許されない

だのに自分を許してしまうのか

戒めはいつまで
戒めはどれだけ
必要なのだろうか

自らを許せない気持ちを抱えたまま
墓の下へ入るのか

大したことじゃないさ
失った顧客
失った仕事
失った友
それだけじゃない
信用さえも

崩れ去る砂の城のごとく
一瞬で消え去る
巻き添えにした人たち
費やした時間とお金
気持ち
ストレス
喜怒哀楽

移ろい行く時刻の中で
手の中に残ったものを
握りしめていられるだろうか

もっと高みを目指しているつもりだったのか

蹴落とされないように
人を蹴落とさないように
しっかりと地に足を着けて
ふらつくことなく

まだまだだけれど


自由詩 まだまだだ Copyright 坂本瞳子 2016-09-27 10:19:12
notebook Home 戻る  過去 未来