天体とこころⅣ
白島真



そうして八月がやって来た
濡れた髪は山脈のゆるい傾斜をなぞるように戦ぎ
大地の荒々しい脈動を伝える両脚は
透徹した眼をもって立つことを求められていた

ぬるい渓流を走るわたしの血管
けっして謎めいてはいないはずの人々の
会話はいつも閉ざされた蕾の形で語られる
口をゆるく開けた魚たちが白い腹をみせ川に浮く

どこにいるだろうか
あらたな蘇りに眼と口の形を記憶する者は
この地球で、この天体、この銀河で
そしてこの国、この街、この部屋で

惑星と大気の言葉の隙間に
微かにふるえる繊毛が生える
えいえんに連なっていく魚と魚のいのち
ひとのいのちもまた

こころを反芻させる器官が
内臓のどこかにきっとある
月の引力に引かれて
鮮烈な鰓呼吸をしているおまえ


自由詩 天体とこころⅣ Copyright 白島真 2016-09-27 10:12:53
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