毒を喰らう
あおば

         160918

秋風が吹くとはなんの意だろうか
月もおぼろに隠れる陰気な蒸し暑い夜には
おばけが丁度好いのだが
お店がこう明るくては出るに出られず尻込みをする
頭と背中は黒いけどお尻から下に向かっては真っ白だよと
買ったばかりのおはぎをひっくり返して呆れる中年夫婦
私たちはどこの世界に住んでいるというの
おはぎは全身あんこで塗りたくってあるのが当然なのに
常識が通用しない世の中ね
これでは亡くなったあの人に申し訳が立たないと
急いで乾物屋に小豆を買いにゆく
老舗の和菓子屋店主はなんでうちに買いに来ないのだと
正直な目を通行人一人一人に向ける
もうじき、お彼岸なのに3連休に浮かれて財布を空にするあなた
おはぎと秋の七草を忘れてはいませんか

森の石松は30石舟で寿司食いねえと
神田の生まれを自慢する若い衆を歓待する
酒癖が悪いから金比羅樣詣での道中は
親分から厳しく酒断ち約束させられている石松が
おはぎをうまそうにぱくついているという噂が流れ
機は熟したと悪賢い街道筋の親分に
石松が大勢の親分衆から次郎長親分にと預かった香典を狙い
都鳥一味に騙し討ちに遭い亡くなったのは、
30石舟を下り、しばらく行ったその後のことです。


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
http://golconda.bbs.fc2.com/
タイトルは、白さん



自由詩 毒を喰らう Copyright あおば 2016-09-18 23:00:21縦
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