花粉症
ベンジャミン
天気のいい日はたまらない
家からは出ない
窓も開けない
(つらいのだ)
去年の夏は猛暑で
「来年の花粉はひどいでしょうね」と
誰かが言っていた
*
その年の自殺者の数字は
少なくても一人 くるっている
来るはずのなかった来年を
のうのうと生きている僕
自然の恵みを受けて
多くの人間が苦しむ皮肉な生命の活動は
滑稽に違いない
中空を飛び交う次の命は
まるで宿る先を探しているようだ
(こっちへくるな)
一つ分の命が
すでに収まりきらなくなっている
*
天気のいい日はたまらない
少しでも明るい日差しを受けようものなら
皮膚を割って芽が伸びようとする
それが命だと知らしめながら
内側でうずくものを押さえ込むのに
弱すぎる抵抗
家からは出ないでいる
窓も開けないでいる
それでも
容赦なく入り込んでくる
悲しいわけでもないのに
仕方なく
僕は涙を流している