花粉症
ベンジャミン

天気のいい日はたまらない

家からは出ない
窓も開けない

 (つらいのだ)

去年の夏は猛暑で
「来年の花粉はひどいでしょうね」と
誰かが言っていた


   *


その年の自殺者の数字は
少なくても一人 くるっている
来るはずのなかった来年を
のうのうと生きている僕

自然の恵みを受けて
多くの人間が苦しむ皮肉な生命の活動は
滑稽に違いない

中空を飛び交う次の命は
まるで宿る先を探しているようだ

 (こっちへくるな)

一つ分の命が
すでに収まりきらなくなっている


   *


天気のいい日はたまらない

少しでも明るい日差しを受けようものなら
皮膚を割って芽が伸びようとする

それが命だと知らしめながら
内側でうずくものを押さえ込むのに
弱すぎる抵抗

家からは出ないでいる
窓も開けないでいる

それでも
容赦なく入り込んでくる

悲しいわけでもないのに


仕方なく
僕は涙を流している



  


自由詩 花粉症 Copyright ベンジャミン 2005-03-01 11:19:35
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