透明人間
みもる

人ごみの中立ち止まり
無理やり自分だけ
時間を止めようとした

深呼吸するように
長い溜め息をつくと

指先から
どんどん体が透けていく

僕は会社で半透明で

友達に会っているときも半透明で

自分の部屋に戻ると
完全に透明になる

めんどくさいこと
やりたくないこと
りふじんなこと

かなしいこと

それに出会うたび
ポロポロとネジが外れていって

僕から何かが漏れ出していた

ある日
独りにもなれてきたなと感じたら
透明人間になっていた

僕を見ている人は
僕を見ているんじゃなく

僕の後ろの人を見ている

僕に手を振った人は
僕に手を振ったんじゃなく

僕の後ろの人に手を振っている

僕に話しかけた人は
僕に話しかけたんじゃなく

僕の後ろの人に話しかけている

君だけが
僕を真っ赤に染めてくれたのに

君には今でも
僕がはっきりと見えているか?

僕にはもう
君が見えない

いつかまた
何人にも見えるように
何色かに染まるまで

僕は透明人間を
ひっそり楽しむことにする


自由詩 透明人間 Copyright みもる 2005-03-01 10:45:21
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