白鷺と太陽
ヒヤシンス
清らかな川辺に降り立った白鷺を見た。
しばらく彼の美しい立ち居振る舞いに目を奪われた。
彼はどこからやってきてどこに向かってゆくのだろう。
なせだか彼を自分と重ねてみた。
少しも美しくない自分が哀れに思えてくる。
心はどうだ。
彼のように振る舞うにはまだ相当な時間がかかるのだろう。
時には自分と対峙して心の奥底を眺めるのも良い。
この白鷺を見て自分の心にもまだ感動する余地があることを知った。
常に心は汚れたヘドロのような泥水で溢れているのだと思っていた。
しかしそうではなかったのだ。
私は彼に救われたのかもしれない。
今まさに飛び立とうとしている彼の頭上は明るかった。
私は久しく曇り空しか知らなかったことを悔やんだ。
このところ太陽を見ていない。
太陽は命の源だ。
苦手だった太陽が今は恋しい。
私は心の底から太陽を望んでいる。
ああ、私の太陽は雲の上で私に微笑みかけているだろうか。
子供の頃は考えもしなかった。
今猛烈に太陽に会いたい。
白鷺は飛び立った。私の目の届かない所に去っていった。
私はこの一時の幸せを待っているのかもしれない。
こんな小さな出来事でも人は感動出来るのだ。
川は清らかに流れている。
澱んでいた私の人生の流れも少しづつ清らかに流れてゆく。
白鷺に見惚れ、太陽を待ち焦がれ、今日も生きている。
人の人生とはそんなものなのかもしれない。