新生〇消滅
ひだかたけし

太陽を連れて来い
燃え盛る太陽を呼んで来い
俺のこの満身創痍の体を焼き尽くせ

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ミンミン蝉の死骸が歩道に落ちていた
アブラ蝉のそれは頻繁に見掛けるが
ミンミン蝉は初めてだった

羽は全体として透明で四つの等間隔の黒い斑点がシンメトリカルにあり
頭部は黒地にターコイズブルーに近い緑を散らしている
六本の足は静かに交差し折りたたまれている
僕の手の平に乗ったまま陽光を受けそのミンミン蝉の死骸は高貴に輝いていた

[わたしは生き切った]

その骸はそう言葉を響かせていた

アアイアイイイウア

その響きはそう木霊を反復していた

あ愛愛いい宇あ

僕はその木霊に聴き入りながら思考した
ああ俺は自らが持てる愛を燃焼させ切っただろうか?
ああ俺は貴重な幾つかの出逢いから愛の本質をこの身を以って掴み取っただろうか?
最後は独り静かに手を組んで愛の宇宙に戻れるだろうかー新たな収穫を持って
それとも自らをどんどん疲弊させ遂には破壊し尽くし悪魔の領域へ取り込まれ消滅するのか?

裏切り
怒り
苛立ち
復讐心
渦巻く渦巻く!
      裏切り
     怒り  苛立ち
      復讐心
そうしてまた
落ちてしまう
堕ちてしまう
      憂鬱
     喪失 哀しみ 
      孤立
    情欲女体情欲 

僕は高貴に輝くミンミン蝉の死骸を手の平に乗せたまま
陽光をジリジリ背中に受けその場にずっと蹲っていた
       
      △

太陽を連れて来い!
燃え盛る太陽を呼んで来い!
俺のこの脆弱な魂を焼き尽くせ!

破壊のための破壊は否、
創造のための破壊は是と。


自由詩 新生〇消滅 Copyright ひだかたけし 2016-09-01 17:36:50
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