雨やみ上がり虹のハシまでいと電話するすると吐く恋人のサギ(ゴル投稿長考版)
高橋良幸

純粋にコマーシャルの陽気な音楽に踊らされたという理由で
白老の海が消波ブロックに砕けている傍を車で
クーラーに何かを充填しなければならなくて
充填しなければ冷房が効かない夏の日
波の音と
風の音と
エンジンの音をむき出しにして
法定の60km/hが後方に遠ざかっていくスピードで
流体となった2車線の片方を走っていた
製紙工場の臭い煙が
こよりのように尾を引いていく
青看に登別の文字
の・ぼ・り・べ・つ!と言えば
く・ま・ぼ・く・じょう!

(クマ牧場!)に併設された資料館には展示がある
アイヌにとってクマは山の神だった
僕らはコンクリートの壁の上で100円の乱切りの人参を買って
片手を上げるクマの口に狙いを定めて放り込んだ
そこからこぼれたものは多数のカラスに奪われてしまうが
むかし隠れた太陽を引き出したという神話の中の功績で
カラスは悪事を少しだけ許されることになっており
クマは彼らを気に留めはしなかった
檻の中にも
都市の中にも
野生と少しの悪意を持ち込むのが
焦げてしまった鳥の仕事らしい
鳥がいまも人と神を架け橋する
人間は人参をもう一袋買って
またそれを放る

悪意がまだゴミ箱を荒らす前の街角で
僕らは大抵の計算をできていたはずなのに
いつも完璧な曲線を引けず
そのために札幌へと向かう国道36号線は歪んでいる
助手席でナビを正確に伝えられないまま
雨が降りそうなんて予報では言っていたが
ここはずっと晴れていた
虹はきっとかかるのだけど
ずっとかかりそうにないようにも思える
信じることはそういうことだから
信じきれないことを信じて
笑ってしまう
電線や枯れ枝からはカラスの糞が落ちてくる
運転席、運転席、
不完全なのが世界で、それを許すのが人間だって(僕が)言っている
完璧な話を聞いたらカラスを連れてくるといい
物語を作り込んでいく白鷺を白日のもとに晒すため
カァ

    もし人間が虹に追いかけられたら、虹に向かってこう言いなさい。
    「おまえの氏や素性を知らないと思うのか。
    おまえはそのむかし、下の天を司る神のむすめが編んだラウンクッ、お守りひもだぞ。
    恥ずかしいとも思わずに、人を追いかけるのか」
    と。すると虹は恥ずかしくなって、さっと消えるのだ、とアイヌは信じているのです。
    ( 『アイヌの昔話』萱野茂著、平凡社ライブラリー、75ページより引用)

あてにならない予報を聞いて
白く伸びていったこよりが色づいてしまうような時のために
アイヌの呪文をメモしておく
色付いてもいいし
色づかなくてもきっといい
虹がかかる場所に虹がかかるのだ

   ∩___∩
   | ノ      ヽ
  /  ●   ● | クマ──!!
  |    ( _●_)  ミ
 彡、   |∪|  、`\
/ __  ヽノ /´>  )
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即興ゴルコンダ(仮)http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5435147#11738483 投稿
のぼりべつクマ牧場CM http://www.youtube.com/watch?v=nMMl_45Bnns


自由詩 雨やみ上がり虹のハシまでいと電話するすると吐く恋人のサギ(ゴル投稿長考版) Copyright 高橋良幸 2016-08-28 19:21:46
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