贈り狼
やまうちあつし

      僕は途方に暮れている
      渡したいものがあるけれど
      今日は誕生日でも
      記念日でもない
      項垂れるむこうに
      ぽっかり浮かぶ
○     満月
      頭を上げると
      狼の顔
      こんなきれいなつきよなら
      なにかとどけるりゆうにたりる
      きみにおくろう
      はなたば
      ししゅう
      はちのす
      くだもの
      けだものだけど
      にんげんだもの
      なんでもおくる
      なんでもおくれ
      なんでも  
      かんでも   
      いいかい   
      噛んでも   
      きみのからだも   
      きみのこころも
      きみもしろみも
      キミシニタマフコトナカレ
      獣の右手から
      マネキンの左手へ
      リボンをつけた銀の銃弾
      紅茶を淹れて待ってておくれ
      ほろぼしてくれ
      ほほえんでくれ


自由詩 贈り狼 Copyright やまうちあつし 2016-08-16 14:56:24
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