シャム
やまうちあつし
猫たちにマスクをつけて
何も話せなくしてやろうか
困るだろうな
好きな魚のことだけでなく
美しい花の名前も
果てしない星座の位置も
伝えられない
そうなればこの街を
捨てるしかないだろう
街の方でも大きな損失
猫が何匹住み着いているかが
その街の価値を計る基準
古い神話に書いてあるけど
図書館で読まなかったか
わたしはこの街の長として
猫への悪戯を思いとどまる
街は安堵の色をして
今日も間違いを繰り返す
机の引き出しから
一度しまったマスクを取り出し
自分の口元に装着
そこでわたしの詩も終わる