誕生日には
坂本瞳子

血圧が低くなっているのを
眩暈を起こしそうになって自覚する
照りつける太陽の下
息が荒くなりつつあるのを
必死に抑えて歩き続ける

冷たい水を全身に浴びたい
そんなことしたら凍え死んでしまうだろう
もうすぐ息絶えてしまうのだから
それもいいだろう

などと妄想してはみても
そう簡単に死んだりしない
それくらいのことも分かっている

だから安易に語らないのだよ
生や死については

もうちょっと大人になってからだね
輪廻転生や
人生の酸いも甘いも知りつくし
熱き血潮もその冷まし方も
赤ん坊をあやし
老人の介護を習得してから
恋と愛とを熟知し
裏切り裏切られ
絶望を味わい
愛される喜びを知り
新しい生命を産み出す感激を体験してから
流れ続ける血を越えて
零れ続ける涙を飲んで
罵られ
嘲られ
辱められようとも
傷口の塞ぎ方を知り
痛みの癒し方を身につけ
それからでいい

そんな想いを馳せた誕生日であった


自由詩 誕生日には Copyright 坂本瞳子 2016-08-15 00:26:44
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