やるせない
坂本瞳子

放り出した腕をそのままにして
もうピアノを奏でるのは止めたい
爪の先から出血し続けてもいい
腕が傷だらけになってもいい
肩が壊れようとも
手の平に切り傷を負っても
手の甲が痣だらけになっても
足がペダルを踏めないように挫いてもいい
もうピアノを弾きたくない
罰当たりと言われようと
高価なピアノを用意してくれた
祖父には申し訳ないけれど
嫌なものは嫌だ
泣き喚いても許してくれないならば
大暴れしてやろう
暴れても許してくれないならば
家でしてやろう
どこかに閉じ込められても構わない
諦めて欲しい
音を奏でる喜びなど
知りはしない
知る由もないのだから


自由詩 やるせない Copyright 坂本瞳子 2016-08-02 23:32:21
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