夏が走る
星丘涙

夏が走る

僕らを呑み込み

暑く 熱く 駆け抜ける
 
喜びも 悲しみも 

痛みも 癒しも

憎しみも 憤りも

熱風の渦の中 混ざり合い

夏模様を描きながらスパークする

何かに酔っぱらい 熱にうなされ 

蜃気楼の中 さまよい乱れる

現実なのか 非現実なのか 確かめる術もなく

ただひた走っている 汗も拭かず 息を切らし

皆 ただただ ひた走っている

何者かに憑つかれているのか

脅されているのか

ひと夏の夢の中を いや永遠の夏の中を

夢遊病者の様にひた走っている

栄誉を求め 地位を求め 金を求め

救いを求め 平和を求め 快楽を求め 

いや何を求めているかはどうでもいいのだ

とにかく欲するままに 生きる為に 訳も解らず

この夏を 汗を流し 走り暮らしている 




やがて初秋の風が吹けば

皆 夢から覚めるのだろう

懺悔したり

喜んだり

焦ったりして

正気を取り戻し

冬に向かい 途方に暮れるのだろう

それまでは この夏を走るのだ

夏の渦に呑まれ 巻かれ

夢を見続けるのだ

ひた走るのだ


自由詩 夏が走る Copyright 星丘涙 2016-08-01 11:46:35
notebook Home 戻る  過去 未来