渋柿
藤鈴呼


とろとろに溶けた頃合いが素敵だと
熟せコールをする君は 塾の帰り道

覚えなければならないことが多すぎて
記憶を辿る旅を始めてる

本当に欲しいのは
冷たい畳の上でも平気な足袋だ

裸足の心じゃあ 寂しすぎる
雪が降っても 積もらぬ季節

初めて見た 霙のような 瞬きを
ゆっくりと繰り返す 大きな瞳に光るのは

粒々の汗の季節を通り過ぎた 嘆き
哀しいと叫ぶ代わりに 思い切り下を向いた

その唇の隙間から 舌がチョロリンコ
出ているかどうか 見えぬ角度で想像している

感謝ばかりを重ねる趣味は無い
言葉ばかりに埋もれる人生はゴメンだと

握ったハンドル 縦横無尽に差し出せば
踏むアクセルが 一際いななくだろう

ここにヒズメは無いけれど
確かに U字型の磁石のような 吸引力

感じるよ 今ここに
渋柿が 転がっていたとしても

大きな口に含んで
大爆笑 できそうな ほどに

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自由詩 渋柿 Copyright 藤鈴呼 2016-07-13 09:55:08
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