きょうコンビニでトンボを助けた
シャドウ ウィックフェロー


近くのコンビニに行ったら
コピー機の裏に入りこんで
トンボがバタバタしていた


羽と全身をブルブルと震わせて
ガラスに勢いよく体あたりする
そのまま横すべりして
左右の出っぱりが越えられずに
床に落ちたりしている

体は少し黄色がかっていて
羽の内側に黒っぽいグラデーションのある
そのむかし確か電気トンボとか呼んでいたやつかなと
かつての昆虫少年は記憶をたどる

この世はコピー機の後ろに入りこんだ
トンボを見て何とも思わない人と
何としても助けたい人に分かれるらしい
わたしは迷わず売り場のビニール傘を手にとると
コピー機の後ろに突っこんで
ごそごそと意外に苦労しながら
なんとかトンボをそれにつかまらせた

そっと引き上げゆっくりと自動ドアまで進む
そして開いた外の世界へと
ビニール傘を大きく振った

トンボはコンビニ前の駐車場をぐるりとひと回りしてから
ぐんぐんと空へ昇っていった

いつかわたしが地獄に堕ちたら
大きな電気トンボが助けにくる
だろうか





自由詩 きょうコンビニでトンボを助けた Copyright シャドウ ウィックフェロー 2016-07-12 17:46:42
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