昭和の夏
星丘涙

まどろみのなか
昭和の夏を漂っていた
モノクロの日差しを浴び
切り取られたジブリ映画の中を
由美かおるが微笑んでいる
蝉しぐれが騒がしく
少年のランニングシャツの白がまぶしい

海で泳ぎつかれると
縁側に腰を下ろし西瓜にかぶり付く
蚊取り線香の煙の中
どこからか加山雄三の「君といつまでも」が聞こえてくる
街灯ひとつない島は
満天の星が渦巻いている
白黒テレビのNHKニュースは
大阪の万博博覧会の模様を中継していた

ノスタルジックな感覚の中
私は夢から覚めた
エアコンから冷気が溢れ
体が少し冷えている
テレビをつけると政治家たちが激論を交わし
妻が台所で夕食の用意をしていた
頭痛がする
鎮痛薬が切れているが
ドラッグストアに買いに行く気にもなれない
床に入り休んでいると
いつの間にか寝入ってしまった

どこからか「君といつまでもが」が聞こえてくる
由美かおるが微笑み
蝉しぐれが騒がしい
私はまた昭和の夏を漂い始めた



自由詩 昭和の夏 Copyright 星丘涙 2016-07-11 20:42:50
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