手の内と山登り
しょだまさし

友人に登山にでも行ったらと
提案されて誘ったら
「別にいいよ」と気のない返事

付き合って数年も過ぎると
恋人関係はこんな風に
覇気のないものになるのだ

それでも歩いてみれば
要所要所で彼は自然に
私の手を取り助けてくれる

久しぶりにデート気分を味わい
下山し始めると霧が出た

用を足すからと
彼は私を待たせて三叉路の
細い方の道を降りた

再び二人で本道へ戻り
行きと同じ岩場で
彼はまた手を引いてくれた

その時冷たい感触があった

そこからしばらく
握られたままの手の内に
意識が集中する

どうもそれは金属性の
輪の形をしたものの様なのだ


自由詩 手の内と山登り Copyright しょだまさし 2016-07-09 16:40:56
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