来るもの
DFW



ただあなたのことを考えている



きっかけのないノートの落書きがあなたに似ているような 、あてどもない
身勝手な線



だしそびれた手紙を机の引きだしにしまい
朝を待った


ただいまや おかえり
おはようや
おやすみ

夏のさよならみたいな手紙にいつかなれたら
それでいい



わたしたちはきっと
手紙をだすのに適した距離で
暮らしている



平坦な氾濫原のシルトにひづめを沈めて
水をのむ
リードバックの警戒心のように


まだ生まれていない夜の閃光を見落とすことをわたしはしない
ましてやまだ生まれていない朝を迎えるあなたを見落とすことなどできそうにもない


あなたに読まれるまえの手紙は
いつも、すこしあなたより遅れている 



身勝手な線の最後に感嘆符だけが残る
痛いきらめきを染みつけて
凍りつきそうなあとを
慌てずにさするあなたの指のような


そんなさよならになれたら
それでもういい




自由詩 来るもの Copyright DFW  2016-07-08 01:39:54
notebook Home 戻る