我が家の歴史。
梓ゆい

仏間に置かれた古い位牌。

昭和十九年七月二十九日、ビルマ國ニテ戦死。
薄くなった金箔の文字で
位牌の主を語っている。

この家は最後娘一人となり
今から50年以上前に血筋が途絶えたのだ。

父の死で迎えた二度目の死。
二つ並んだ親子の位牌が
父の位牌に映りこんでいる。

それはまるで
何かを訴えかけているようにも見えた。

もうすぐ訪れる暑さの盛り
家の中を通る風が
平和を羨む魂の姿になる。

今日は父が二人の位牌の主を連れて
我が家へと帰ってくる日。







自由詩 我が家の歴史。 Copyright 梓ゆい 2016-07-04 18:39:20
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