夕暮れの流れ
霜天

僕らが同じここという時代で言葉を向き合わせて日々に紛れる、こと
昨日川から汲んできた水をコップの中で回転させると底に小さな刺がたまった

アスファルトを雨が叩くと決まって空を見上げる人がいた
遠いものを真似るように口笛を吹く、その音が響くと駆け出す人がいた
間違えた道を何度も手でなぞって、からっぽの両手で笑うことが出来る人
円い公園のベンチの端で手を広げて、落ちないそのバランスで歌っていた人

通り過ぎていくだけで、体に刻み付けられていくようなもの


両手ですくう
空が暮れると伸びていく辺りを

止められない電車が泣き言を言うのを
夕暮れる頃に誰かが聞いている
僕らが引きずっているものは
きっとそんなに大きなものじゃなくて
両手ですくう、それくらいの

引きずったあとが少し、痛いくらいの


体中に刻み付けられている
流れるみたいに巡っていること
僕らが少し、ひとつふたつの
誰かの言葉を忘れた頃に
夕暮れた空に明るい夜が来る


あの人たちが遠くなってしまった後のこと
昨日の夕暮れに描いた絵を今日にはもうどこかへなくしてしまった
ひとつ音が抜けてしまった歌声
誰かが覚えている古い風景
流れるみたいに刻み付けられていること

どこかに


自由詩 夕暮れの流れ Copyright 霜天 2005-02-26 19:35:58
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