てくてくてく
カマキリ
優しい人に
もう優しくしてもらえないけど
もらった傘がすごく赤いから
ぼくはまだ歩いている
たとえばこの先に暗くて辛い事があるとして
ぼくはもう優しくしてもらったから
嘘をつかないことを、許してもらったのだから
ぼくがどんな人間とか
そんな問題は通り越していたんだね
冷たくもない雨が降ってきて
ときどき来た道を振り返るけれど
開いて閉じて弾いて流して
めまぐるしい速度に
忘れちゃいけないことを思い出すのを
減らしていかなければならんのです
君はもう、僕に優しくしてくれないけれど
ぼくは歩かねばならんのです
誰ももう、ぼくに優しくしてくれないかもしれないけど
ぼくはまだ歩いている
日差しの中と糸の雨の中とコウモリの夜と
消えてしまった夕暮れを