残り香
あおい満月

悔しくて、悔しくて、悔しくて、
何度も、何度も、キスをする。
かなしくて、かなしくて、かなしくて、
いつまでも、いつまでも、抱きしめる。

別れが近づいていることが、
わかればわかるほど、
永遠を信じてしまう。
最後のぬくもりが忘れられない。

病室の窓から覗いた空に、
虹が架かっていた。
かなしいはずの色合いが、
やけに胸をくすぶる。

このドアを閉じたら、
鍵を返さなくてはいけない。
背を向けた向こう側の世界には、
もう二度と戻れない。

見つめる先には、
道が開かれているから、
ためらわずに進めばいい、
その願いに応える勇気が今はない。

雑踏のなかをあてもなく進む。
最後に背中を押してくれた、
少しつめたい手を握りしめて、
約束を閉じながらぬりかえていく。

破り捨てたページには、
読んではいけないことばが、
かかれていたはずだ。
少し煙草の残り香がしたその気持ち。



自由詩 残り香 Copyright あおい満月 2016-06-19 17:55:56
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