陽子
レタス

とても胸苦しい
不快指数90%のそば屋で
おまえはもり蕎麦を啜り
俺は鴨南蛮を黙って啜っていた
お前は何時になく饒舌で
時々何を言っているのか解らなかった

それがお前の焦りだと知ったのは
秋風のたつ頃だった

陽子

意識不明だったお前が身体を震わせ
その瞳は宙を舞った

緑に光る生命曲線が次第に平坦になってゆく中で
俺は主治医と
ぼそぼそと語り

これで終わりですか



俺は聴いた
医師はなにも応えず

緑のモニターを指さす

静かな時が過ぎてゆく

次第に緑の線は平坦になってしまい
何も言葉にすることは無くなった

俺はお前の屍を見るとは思わなかった



自由詩 陽子 Copyright レタス 2016-06-15 21:06:13
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