子守唄/深夜の霧は罪のように 明け方の雨は幻のように
銀馬車でこい
静かな呼吸から寝息へ
移ろいは 深い罪
霧のように
夜の霧 深すぎて
そこは天国ではなく寺院ではなく
神社ではなく教会ではない
誰も手を触れることない
水滴は 都会の電柱と電線
縒り集め 縒り直して
霧の天気予報を伝えるための
電気を探し続けるように
夢の中に沈黙する
道の果ては 霧
人生とは何かの
意味を知ろうと思ったら
早朝起きてすぐ飲む
缶コーヒーを買った後
ポケットに入れて
苦いブラックコーヒーが
飲みたいと思って
黒い暗闇が飲みたいと思って
夢と云う霧の中を
走り続ければいい
深い霧の途中
道の果て 捜せ
*
夜の都会のすべて
黒い空だとしたら
すべての罪は
電気か幻だろう
罪があっても許されて
生き延びている命に
霧は 暗闇よりも深く
伝記にあらわされた或る人生にも
何らかの罪状が捧げられて
詩になるかもしれない
電気と
命になるかもしれない
電流で
出来た霧は
そう云うような霧は
きっとあらゆる罪を
隠しながら
夢の中の道の果てへと続く
深夜 誰かの寝息は
生まれたばかりの命に
罪がないことを伝えながら
すでに海中に沈んでいる
帆船を背負いながら走り続けて
脇を小さな魚が泳ぎながら
星はもう見えない黒い空
追い越していった
暗闇より速く魂 眠れ
*
深い霧は 明け方には
幻の冷たい雨へ