ホロウ
ただのみきや

行倒れの男のように
靴が片方 ぽっかり見上げている
我慢しきれず漏らしてしまう
重苦しい空はぽつりぽつり
悲哀をくすぐりながら
見定めていたはずの世界を沈め
アトランティス   
瓶の蓋を開けるように冷たい青
天恵は肉のうつろを奏で
ひそやかな問答は続く
πのように連なる不規則性へ
素足の息づかい
疑似秩序の旋律が絡みつく
娘の小指ほども細い蛇の暗黙の束縛
うわ言のような視線が
支払いを求めている
摩耗した姿で
あ行が口で砂になる
映る空を避けながら
乾いた靴が時を刻んで往く
季節を葬り写真だけ増やしながら
ねめつけるいろうすい鉄線の花
ひとつ またひとつ
狂う弦は切れて果てて女の手中
残された男もまたうつろ



            《ホロウ:2016年6月8日》









自由詩 ホロウ Copyright ただのみきや 2016-06-08 22:16:23
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