紡音(つむぎね)
少年(しょーや)

「おとなりよろしいですか?
おとしものをひろいました。
おとどけしたいとおもい、
おとずれてみました。
おとなりよろしいですか?
おともだちになりませんか?
おとぎばなしみたいなゆめのかけらをひろいました。」

聞こえる 唱えるように呼ぶ声が
その姿は見えないのに「会いたい」ってさ
今日もまた

街を歩く誰かの足音
遠くではしゃぐ子供の笑い声
そんな物にも怯えてたっけ
耳を塞いで泣き続けてた
孤独を忘れたくて伸ばしたこの手を優しく握る貴方がなんだか可笑しくて一緒に笑った
今でも覚えてるよ
貴方がくれたんだよ


この世に音楽があってくれて良かった

優しい歌も、悲しい歌も、楽しい歌も、苦しい歌も、
笑える歌も、怖い歌も、明るい歌も、
暗い歌も
嬉しいはずなのに寂しくなる歌も、
辛いはずなのに暖かい歌も、
怒りの歌も、嘆きの歌も、恨みの歌も、妬みの歌も、
憎しみの歌も、慈しみの歌も、
全てに助けられた

人が怖いはずなのに人が作る歌を聴いた

音楽を通して人を知り
音楽を通して人を好きになれた

あぁ、良かった……

こんな馬鹿げだ事を伝えるための言葉があって良かった


本当に良かった


おとといの夜に泣いて
昨日は無理して笑って
今日だって何も出来ずに
おとくいの自己嫌悪

この景色もあの痛みも
その思いや願いも当たり前過ぎて
気づくことが出来なかったよ
そこにあるのに忘れてしまっていた
零さないように
溢れないように
迷わず貴方の元へ差し出すから
ありふれたものにさえ確かに宿る命がまた行く
貴方が「止む」その刻へ


「音鳴り、宜しいですか?」


自由詩 紡音(つむぎね) Copyright 少年(しょーや) 2016-05-27 00:15:23
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