空き瓶
あおい満月

空に、
夜のとばりがやってくる。
道に、空の足跡がおちている。
おびただしい、
黒い足跡だ。
私はその、
息絶えた鴉の死骸になった、
足跡のなかを進む。

先がみえない。
火酒をいくら飲み干しても、
眠りは一向に訪れない。
爪先に針を刺された。
あなたは本当は何がしたいの?
猫が探りを含んだ緑色の目を翻す。

私がしたいのは、
火酒をまたひとつ飲む。
したいことは、
あいつを追放すること。
隠された部屋に、
今も巣くうあいつ。
私を犯した、
罪を尻目にのうのうと生きている。
あいつの目の前で、
あいつを追い越して、
踏み潰してやる。
願いは月を隠した闇に溶けて、
片手から太陽がついてきて、
あらゆる思いを剥いでいく。

朝は過ぎていた。
夢か現か、
意識がないまぜになった足元に、
猫が鼾をかいている。
転がる空き瓶に、
引き伸ばされた人肌が映る。



自由詩 空き瓶 Copyright あおい満月 2016-05-24 22:14:34
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