67歳
花形新次
仲間たちと旅に出た
バイクに乗って
海沿いの道を
ぐるり一周するんだ
これから始まる
窮屈で退屈な時間に備えて
最後の自由を味わう旅
僕らはあのとき
確かに青春だったと
それぞれの記憶に刻み込むための旅
新しい出会いの予感に
今から心が震える
・・・・・・・・・・
「そこのコンビニ寄ろうぜ」
「オーライ」
走り始めて12分
お互いに感じた尿意
かすみだした視界
青も緑も黄色も全部同じ色に見える
ハンドルを握る力の低下
しびれ出す指先
「作小太郎さん、わし、やっぱり
止めるわ」
500メートル間隔毎に
離脱していく仲間たち
それでも
俺は走り続ける
67歳
加齢臭とともに