美しい文様
藤鈴呼


骨折をした年の暮れ
左手で 年賀状を 書きました
蚯蚓ノタウチ回るような 面持ちで
心持ちだけは 穏やかに
ただ お餅だけは
何故か 食べる気が しませんでした

そろそろと流れる 雲の隙間に
綺麗な青空が 見え隠れしましたが
何だか 泥雑巾を 思い出してしまって

どんなにキレイな絵具でも
スポイトから垂らしたヨダレ一滴で
ぐちゃぐちゃの味わいに なってしまったり するの

黄色の 幼稚園児を 懐かしみたくなるような 色合いの
区切りばかりが クッキリ ハッキリついた バケツで
大きな筆を ぐるん ぐるんと
回しながら 洗うと
何故か あの時の 飛行機雲を
思い出して しまうのです

右手で書いた 自分に出来る 最高の綺麗文字と
逆さまで書いた ちょっと不純な感覚のする 波打ち文字と
左手で描いた 箸にも棒にもかからないように 思われる文字が
それぞれに もじもじ と 恥ずかしがりながら 絡み合って
もう この上なく 美しい文様を 創り出したのです

ああ それは 筋雲よりも 尊く
何処までも 飛べるかのような
空の上の 絨毯なのでした

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自由詩 美しい文様 Copyright 藤鈴呼 2016-05-21 08:52:24
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