ゆのみ
あおい満月

夜の台所で、
テーブルに残った母の湯飲みのなかに、
数ミリ残った酒の水面に映る私を探す。
近づけば近づくほどに私は見えない。
離れれば離れるほどに大きくなる、
蛍光灯に頭が喰われていく。
影がひとつ、またふたつと、
色をなして、湯飲みのなかは、
白と黒と透明の、
三色パレットだ。
蛍光灯の影が、
満ちる月になって、
水底の淵を滑り降りていく。
そこには、
私にしか見えない階段があって、
その向こうには、
かたちは見えないが、
何かが眩しく艶やかに、
はじける音がする。



自由詩 ゆのみ Copyright あおい満月 2016-05-19 22:37:04
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