あの音
春日線香

家のまわりをうろついてるあの音
ざりっざりっと砂利を踏むあの音
あの音
二本の白い木のような足
指は全部ある
裸足で少し汗をかいてる
五月の夜
家のまわりをうろついてる
あの音

男もしくは女
膝から上は闇に包まれている
年齢はさだかではない
子供もしくは老人
頼りない感じ
折れてしまうかもしれない
そう言ってもいい
あの音
ぼんやりと白く浮かぶ足
あの音

天井を眺めている
誰が
暑いのか寒いのかよくわからない
布団の端から足が出ているのか
溶けてきてるのか
これは
死んでいる
死んではいない
家のまわりをうろついてる
誰が
誰でもかまわない
ざりっざりっとうろついてる
あの音


自由詩 あの音 Copyright 春日線香 2016-05-18 21:51:26
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