風呂上り。
梓ゆい

しゃこっ。しゃこっ。と響くスポンジの音。
100数えてから出るんだよ。と
身体を洗いながら父が話しかけた。

「1・2・3・4・5!!」
熱を帯びて赤く染まる肌が
少しずつ汗を滴らせる。
途中上半身を出して空気に当たる瞬間は
湯気が立ち上る浴室でも
かすかな風を感じるほど敏感になっているのだ。

私と妹は意地になって
再び浴室の中で元気よく数を数え始める。
頭を洗い
父が入った瞬間からは
風呂釜の中も楽しい遊び場に早変わり。

4人の声が大きく響く浴室の中
出窓から出てゆく湯気が
夜空の星に食べられているかのようにも見えた。

「96.97.98.99.100・・・・!!!」
風呂から上がる妹二人の水しぶきが
電球の太陽にきらっと反射をして
ゆったりと湯につかる私は思わず
水の抵抗を受けて沈みそうになる。

慌てないでゆっくりと出なさい。
父の腕に支えられ
嵐に呑まれた小船のように
小さな身体を湯船に沈めた。






自由詩 風呂上り。 Copyright 梓ゆい 2016-05-10 01:11:05
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