糖衣、それは深刻な
初谷むい


糖衣、それは深刻な結露のようにわたしをつつむ薄い劣情

正解のない会話をするゆびさきで祈りのようにラブと打ち込む

忘れやすいこころですので安心してばかにしたり傷つけたりしていいです

涙の出る穴 いつか誰かの前で開かれていきそれは美しいだろう

燃やされてしまった家がどこかにあるそれに心を痛めることはなかった

ひかりのような料理が作りたいのに芯のあるパスタしか作れない

暖房の温度をガンガンあげようねお酒は楽しくなるからすきだ

いいよっていうことが嫌だけどいいよって思うからしょうがないじゃん

世界一ラブリーなので泣くときは普通に化粧が落ちて溶けて死ぬ



わたしがこころのないうちゅうじんなら




記憶の引用


世界で一番、っていうキーワードを積極的に活用していきたいよなあそれが本当であっても本当でなくても。ある思いをころすとき、何よりもひかるもの、あれが一体何だったのかは、わたしたちが死ぬときにしかわからない。世界一きれいな君の名前、それがわたしにとってだったのか世界にとってだったのか、そんなことはどうでもいい。幸せになろうねがんばろうねって、二度と見ることのない二つ並んだ陰に向かって言っていた。あれはなんだったんですか。愛されてしあわせになるよ。わたしたちは。ずっと。二度と、グーグルで君の名前の検索をかけることはないだろう。しあわせに、なろうね。



短歌 糖衣、それは深刻な Copyright 初谷むい 2016-05-05 16:02:18
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