残酷な春
天野茂典



  ふくらみの桜の花のもやいからあなたに送ったホカロンひとつ

  銀河からいかなるものも貫いてやってくるんだニュートリノ

  帰郷しようと世界地図を開いてはゆく当てもなく東京にいる

  卵黄と交わすメールの非凡さに驚いているたかが鶏

  未熟さを修正液で消してゆくそこだけ刈られた田んぼのように

  新宿の奥に開いてるモーテルの布団の綿の重さが違う

  外套をまとった少年いまだ処女のごとくに童貞でいる

  血の染みた桜花一枚ちりおちて残酷な春が始まってゆく





             2005・02・24


短歌 残酷な春 Copyright 天野茂典 2005-02-24 18:08:31
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