ポケットに
オイタル

ポケットに
なまりでできたどんぐりをひとつ入れて
川沿いの道を歩いた
地表が
ルーレットみたいにぐるぐる回る朝
僕は ポケットに
色の褪めた赤いどんぐりをひとつ入れて
長い川沿いの道を歩いた

流れに向かって進めや進め
ドガシャカ ドガシャカ
山の声
波を蹴立ててぐいぐい進め
ドガシャカ ドガシャカ
花神輿

これから僕は 川沿いの道を通って
怖いお話を教えに行くところだ
昔なじみに 怖い話を
でも
だめかもしれない
ポケットの半眼のどんぐりが
どうしようもなく重くなってる
だめかもしれない
とても行き着けない
かもしれない

流れを割って進めや進め
ドガシャカ ドガシャカ
山の声
波を蹴立ててぐいぐい進め
ドガシャカ ドガシャカ
花神輿

ポケットに沿ったどんぐりが
そっと僕にささやく
だから言ったじゃないの
あたしをかじっちゃダメなんだって
何度も何度も
言ったじゃないの だから

流れに向かって進めや進め
ドガシャカ ドガシャカ
波を蹴立ててぐいぐい進め
ドガシャカ ドガシャカ

流れ流れて進めや進め
膨れ上がったどんぐりを
ポケットの中に確かめて
こうなりゃ終わりの終わりまで
花 ひとひらの枯れるまで
波を蹴立ててぐいぐい進め
ドガシャカ ドガシャカ
進めや進め

日暮れて夜の足音が近づく頃
木立が騒ぐ 川べりから山へと
枝先から
夕空が滑り落ちる


自由詩 ポケットに Copyright オイタル 2016-05-05 10:00:15
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