流星
本田憲嵩

湿った黒髪の纏わりつく夜
子供のように無邪気な指先
で確かめる暗がりのなか憂
欝な鏡面のように光る素裸
のゼラチン質、顔を埋めて
息も絶え絶えに幾度となく
試みられる潜水、ふと見上
げれば目も眩むばかりの海
面を支配する赤い火の、あ
まい呼吸、その赤い反射光、
そのあとに訪れる打ち寄せ
られる岩礁のような死者の
ねむり、あおじろい浜辺の
うえの星月夜、口紅の広告
の艶やかさで幾重にも背中
に降り積もる顔の見えない
女のくちびるの星のタトゥ



自由詩 流星 Copyright 本田憲嵩 2016-05-05 01:48:26
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