混濁
ただのみきや

うすい眠りに包まれて
探っている
五月の風を手招いて萌える木々
光の纏いで取り戻す
ざわめきの形象は
淡く爪先立ち
まどろみに波紋を呼び起こす
山と山との重なりに
隠された遥かなる道程
森に迷い異形の女を追う
いつしか昼も夜もない
薄明の街で渇いてゆく
跨いだ時の畔に実るものあって
目を覚まし夜明けを待つ者
夜明けてから目を覚ます者
生ける生者と死せる生者
生ける死者と死せる死者
剥離する夢
破水する眠り
睫毛の隙間から射し込んだ
一片の光の効能が
死の母胎を忘却させ
その刹那の孤独



         《混濁:2016年5月3日》








自由詩 混濁 Copyright ただのみきや 2016-05-04 18:30:34
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