ほむらたび
あおい満月

燃えるもえる、
私が燃える。
街は安穏を保ちながら、
流れるながれる、
それぞれの岸に向かって。
燃えるもえる、
私が燃える。
私だけが燃えている。
人々は手を休めて、
それぞれの鏡を覗いている。
あの人たちのなかでさえ、
私には見えない何かが燃えている
はずなのに、
お腹に卵を抱えるようにして、
人々は誰もがみな、
やって来る何かをじっと待っている。

*

ごうごう、
と燃えながら走ってきてしまった私は、
(燃えるのをやめたい)
と樹木に訴えるが、
枝が私の髪を掴んで、
火の粉を弄ぶ。
(君は燃えていたほうがいい。綺麗だから)
樹木は幹から風を吹いて、
私をいっそう燃えさせる。

**

(燃えるのをやめたい、やめたい)

気がつけば泉に来ていた。
私は泉に棲む女神に訴えた。
すると女神は、
(あなたは泳げないでしょう?ここからやがて海に旅立っても泡になるのがオチよ)
からからと鼻から滴を放ちながら笑う。

***

気がつけば見晴らしのいい丘にいた。
丘には北風が強くふいているようだった
燃えている私にはわからないが、
少年が一人震えていた。
私を見つけた少年は言った。

(おお、火じゃないか。良かった!寒かったんだよ、暖めてよ。)
そういってかちかちと私の腕に石をすり始めた。

****

そこは、祭りの夜だった。
人々は松明を掲げ踊っている。
音を奏でている人々は、
みな私のように燃えている。
(おかえり!)
一人が手を差しのべる。
繋がると焔は一斉に月よりも明るくなる
(君は火であるべきだよ!)
誰かが言う。
(そうよそうよ、一緒に燃え上がりましょう!)
別の誰かが言う。
私はなんだか嬉しくなり、
彼らと一緒に盛り上がる。
祭りの夜は深くなる。
月までもが、赤い紅をさして。



自由詩 ほむらたび Copyright あおい満月 2016-04-22 20:52:17
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