マイム
あおい満月

この目には見えなくても、
手だけはいつも知っている。
手のなかの目。
感度は光よりも早い。
この手が汗ばむと、
何よりも危ない未来への暗示
のなかにいる私。
どこに行くのかわからぬままに、
一定の流れのなかで一人、
マイムを繰り返す。

*

いくつもの喝采が過ぎていった。
人々は何度も同じことばを繰返し、
私を撫でていった。
けれど、ただ撫でていくだけ。
私の片手に残ったものは、
数枚の切り札。
また、一枚目が破かれていく。
残るのは、ジョーカーかキングか。

**

静寂のなか、
顔だけが震えている
私の顔は鏡のなかで、
モノクロの平穏を繰り返す。
震えている顔のなかに孔が空いている。
孔はふつふつと殖えていき、
私の足元も呑み込んでいく。

古くなった、
カジュアルシューズが残された。


自由詩 マイム Copyright あおい満月 2016-04-21 21:08:38
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